Kurt「トーム」
Tom「ん?」
Kurt「ボク、好きな人ができた」
Kurt「これからはその人のところに住もうと思って。もう世話してくれなくても大丈夫だから。今までありがとね。もう会えなくなっちゃうけど、元気で」
Tom「そうか」
と言いながら
カートはずっと人に対して恋愛感情を持つことがなかった。
ようやく人を好きになった。
受け入れられた。
それなのにカートのいない世界を想像して寂しいなんて
言えるわけがない。
数日後。
Tom(……いる)
Kurt「あっ、いらっしゃーい」
Tom「何でいるんだ? 引っ越すんじゃなかったのか?」
Kurt「あーアレね」
Tom「そうだよ! ……もしかしてふられたのか!?」
Kurt「実は……」
Kurt「あれ嘘なんだ」
Tom(あー……)
Kurt「どうしたの?」
Kurt「まさか信じたの?」
Tom「もういい。俺が馬鹿だった」
Kurt「ほんとに馬鹿だね」
カートの言うとおり、俺は本当に馬鹿だった。
Kurt「ボクがさ」
Kurt「本気で人を好きになるわけじゃない」
こいつの中にある深く根づいた闇を理解していなかった。
Tom「嘘でもそんなこと言うな」
Kurt「えーどうして?」
Tom「どうしてもだ」
Kurt「えー」
だってそんなの寂しすぎるから。
Kurt「もしかして寂しかった?」
Kurt「どこ行くの?」
Tom「買い物。何もないからな」
Kurt「はーい。行ってらっしゃい」
「寂しかった」
言えば伝わるだろうか。
お前がどんなに寂しいことを言ったか
俺がどんなに寂しく感じたか
言えば伝わるだろうか。