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1~10

1.
「泣かないで」「泣いているのは君だよ」「笑って」「じゃあ君も笑って」「好きなんだ」「僕も好き」「ずっと一緒にいたい」「離すとでも思った?」「夢みたいだ」「現実さ」「ちゃんといる?」「いるよ」「僕も?」「君も、僕も」「分からなくなる」「これはどう?」「あったかい」「君もあったかい」

2.
忘れられないなら、忘れなくたっていいよ。捨てられないなら、捨てなくていいんだ。忘れられなくて捨てられなくて苦しくても、君はまだ全部抱えている。それでいいじゃん。胸が締まる夜は、僕を呼べ。ふらついた時は、支えてあげる。疲れたなら、少し休めばいい。一緒にいよう。二人ならそれができる。

3.
僕は君じゃなくちゃ駄目で、君は僕じゃなくてもよくて、君に好きになってもらいたくて、想いばかりが強くなって、僕は身動きが取れなくて、目を離すと君がいなくて、僕は必死で探して、引き止めたいのに声が出なくて、伸ばした手は君には見えてなくて、瞬く間に遠ざかって、ああ、もう、君に殺される。

4.
知らなかったでしょ?君が好きになる前から、僕は君が好きだった。それこそ生まれる前からずっと。人には運命があるという。神様から授けられる。僕の運命に君がいるんだ。つまり君の運命にも僕がいるってことさ。まだ分からない?分からせるよ。これから嫌っていうほどにね。二人はもう離れられない。

5.
「俺は騙されている」「誰に?」「君に」「そうなの?」「どうなの?」「だとしたら?」「どうしよっか」「遊ばれてみれば?」「名案」「ね」「とっても」「楽しいよ」「何をする?」「何をされたい?」「分かっていると思うけど?」「ちゃんと口で」「照れるなあ」「白々しい」「キスして」「次に?」

6.
一緒に逃げよう。世界が君に何をした?世界が君に何をしてくれた?世界に君は何ができた?うんざりしないか。僕はすべて捨てたい。思い返してごらん。ためらう理由なんて一つもないさ。君も同じはずだ。早く手を取って。荷物はここに置いていけ。朝が来る前に行かなくちゃ。君が来なくても、僕は行く。

7.
もう笑いかけてくれないんだね。何が駄目だったのかな。君が知りたくて、僕を知ってほしくて、貪るように求めた。君も同じだったじゃないか。すべて嘘だったの?君は変わってしまったの?どうしてだよ。いつからだよ。納得がいかないよ。僕は君が好きだった。ただ好きだった。それだけでよかったんだ。

8.
正直に言おう。君に会いたくない時があるよ。声も聞きたくないことも。姿を思い出すのも嫌になったりさ。君を遠ざけて、どこまでも遠ざけて、一人になる。だけどね、どんなに遠ざけても、気づいたら心の中にいて、僕は君に向かっていく。好きなんだ、君が。何度だって好きになる。やあ、会いに来たよ。

9.
あいつじゃなきゃいけない理由なんて、そんなの俺が知りたいよ。分からなくてほとほと困ってる。君を好きになれたらと何度も思った。実際好きになりかけた。でも無理だった。あいつが消えなかった。すべて捨ててもあいつだけが残った。この気持ちが恋じゃなくても、愛じゃなくても、胸に持ち続けるよ。

10.
そんなに僕が嫌いなの?何でそんなひどいこと言うの?嫌いなら近づかなきゃいいだろ。わざわざ現れて、ぼろぼろになるまで叩きのめす。楽しいの?あんたは何?僕をどうしたいの?ここはゲームじゃないんだ。終わりは終わり。その時も笑うの?それが望み?それで満足?僕はそれでもあんたを憎めなくて。
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2.友達

 辞書のお礼と言ってヒデが連れて来たのはファーストフード店だった。
「本当に何でもいいの?」
「おう! でもこの中からな!」
「それ何でもいいって言わないけど」
 ヒデが自信満々に広げた携帯クーポンを奏では一蹴した。溜息を吐いてカナデは携帯を見て、「これ」と指差した。
「飲み物は?」
「コーラ」
 ヒデはカナデの注文を伝え、自分も携帯クーポンから選び店員に言った。番号札を受け取り、窓側の席に腰を下ろした。
「初めて話すよなあ」
「多分」
「ていうか俺お前の名前知らなかったんだけど、一学期からいた? 俺顔見たら大体名前言えるのに」
「いたよ」
「それはチェックしてなかったあ。でも覚えた。カナデ」
 ヒデが下の名前で呼ぶとカナデは目を見開いた。
「……何で?」
 一呼吸置いて質問が来る。
「何でって何が?」
「下の名前」
「え? 呼んじゃいけなかった? 今日から俺達友達だから、呼ばせてよ」
 何を意識したわけでもない。自然と出した言葉でカナデは不信な目つきをヒデに向けてきた。
「何で?」
 冷たさの増した質問だった。ヒデは足りない脳で必死に考えた。おかげですぐに言葉を紡ぐことができなかった。
「俺はただ辞書を貸して、その見返りにおごられてるだけ。それ以外に何もないだろ」
「何もなくねえよ! 俺とお前の間に交流が生まれた。それってすごいことじゃね? 今日俺が辞書持ってきてたらこんなこと起こらなかった。お前の名前も三年間知らなかったかも知れないじゃん。だから、友達」
 自信満々に告げると、眼鏡の奥で目の色が変わった。少しだけ優しくなった。
「あんた馬鹿だね」
「はは、よく言われる」
 事実ヒデはお世辞にも好成績とは言えなかった。
「俺カナデって呼ぶから、俺のこともヒデって呼んでよ。みんなそう呼んでるし」
「頂きます」
「ちょいちょい無視かよ!」
 カナデは一瞥もくれず静かにハンバーガーを食べ出した。

1.救世主

「あー!」
 授業が始まる直前ヒデの叫び声が響き渡った。
「ヒデうっせーよ! 何なんだよ?」
 近くにいたクラスメイトが叱りつけながら問うた。他のクラスメイトも集まってくる。
「あー! もー!」
「だから何なんだって!」
「忘れたあ!」
 ことを伝えるだけなのにいちいち声が大きい。うんざりしたような顔でクラスメイトはどういうことなのか理解した。
「お前次忘れたら課題って言われてなかったっけ?」
「そうだよ!」
「高田馬鹿じゃん」
「……そうです。俺は馬鹿です」
 女子に言われてうなだれた。
「他のクラスに借りてくれば、万が一担任来てもごまかしといてやるから。」
「マジで! 愛してるぜ!」
「声でけえよ」
 クラスメイトの呆れた声を背中で聞きながら、教室を出た。

 急いで隣のクラスに来たが、もぬけの殻。次のクラスに行くが、そこにも人はいなかった。こんな時に限って移動教室らしい。ヒデは最後の綱を望み四組の教室に入った。
「誰かいる!」
 勢いよく開けて覗くと、電気の点いていない教室にたった一人男子生徒がいた。学年の名前は大体把握していたヒデだったが、どうにも名前が出てこなかった。
 その男子生徒はヒデを一瞬だけ見遣ると後ろのドアに向かった。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
 どうやら悪い奴ではなさそうだ。声をかけると止まってくれた。
「何か用ですか?」
「俺二組の高田っていうんだけど、英和持ってない?」
「英和……」
「俺忘れ物多くてさ、次忘れたら課題出されちゃうの。だからあったら貸して! このとーり!」
 ヒデは手を合わせて懇願した。顔を上げずにいると、男子生徒の足が消えた。戻ってきたら、水色が目の前に出された。
「どうぞ。たまたまあったから」
「うおー!」
 辞書を手に取ってヒデは感動のあまり奇声を上げた。
「じゃ」
「マジでさんきゅな! あ、お前名前は?」
 男子生徒は何も言わずに教室を出て行った。それと同時にチャイムが鳴ったので、名前を聞くことができず教室に戻ることになった。
 軽く走りながら、辞書を見てみると黒く文字で「星島奏」と書いてあった。

 SHRが終わってすぐに荷物をまとめたヒデは辞書を持って四組に向かった。もちろんクラスメイトに挨拶をすることは忘れない。
「よお、高田じゃん」
「おいっす」
 四組に入ると、声をかけられた。意味もなく手を挙げて応えた。
「どうしたんだよ?」
「いやちょっとメシアに用があって……」
 クラスを見渡してカナデの姿を探した。生徒は「メシア」という単語に首を捻らせている。
「あ、発見!」
 ヒデは後ろの席にいたカナデを指差して言った。
「え、何、星島?」
「うん、そう」
 荷物をまとめているカナデに駆け寄った。
「よ、メシア!」
 声をかけたが、カナデは目も合わせてくれなかった。
「えー何で無視すんの?」
「俺はメシアなんて名前じゃない」
「いやあ俺にとってはメシアだからさ。辞書あんがと。おかげで課題免れた。本当にさんきゅ、星島奏君」
「別に。あったから貸しただけ」
 素っ気ない態度で辞書を受け取ると、カナデは席を立った。四組の生徒は物珍しい目で二人を遠巻きに見ていた。
 ヒデは去ろうとするカナデの腕を掴んだ。
「何?」
「お礼させてよ」
 歯を見せて笑うと、カナデは眉を潜めた。

 遠い過去の夢を見た。
 多分あまりいいものじゃない。

 痛みも悲しみもない。
 ただの記憶の一片に過ぎない。
 けれど、

 アァ……
 ウ……ア
 ……アッ

 声が、止まない。
 醜い自分自身の声が。

Kurt「うーん……」
Kurt「うざいうざすぎるよ。ほんっとに」
Kurt「何でまだ聞こえてくるの? 意味分かんない」

 ぐにっ。

 あ、れ?

Kurt(音が、止んだ)
Tom「どうした? 珍しく皺なんか作って。怖い夢でも見たか?」
Kurt「んーん」
Tom「そうか? ならいいけど」
Tom「今日のご飯はグラタンだぞー」
Tom「海老たっぷり」
Tom「つーか、また下履いてないし!!」

 声が、かき消されていく。

Tom「下履け!!」

 醜いあの声は、もう聞こえないんだ。

No title

Kurt「トーム」
Tom「ん?」
Kurt「ボク、好きな人ができた」
Kurt「これからはその人のところに住もうと思って。もう世話してくれなくても大丈夫だから。今までありがとね。もう会えなくなっちゃうけど、元気で」
Tom「そうか」
 と言いながら
 カートはずっと人に対して恋愛感情を持つことがなかった。
 ようやく人を好きになった。
 受け入れられた。
 それなのにカートのいない世界を想像して寂しいなんて
 言えるわけがない。

 数日後。
Tom(……いる)
Kurt「あっ、いらっしゃーい」
Tom「何でいるんだ? 引っ越すんじゃなかったのか?」
Kurt「あーアレね」
Tom「そうだよ! ……もしかしてふられたのか!?」
Kurt「実は……」
Kurt「あれ嘘なんだ」
Tom(あー……)
Kurt「どうしたの?」
Kurt「まさか信じたの?」
Tom「もういい。俺が馬鹿だった」
Kurt「ほんとに馬鹿だね」
 カートの言うとおり、俺は本当に馬鹿だった。
Kurt「ボクがさ」
Kurt「本気で人を好きになるわけじゃない」
 こいつの中にある深く根づいた闇を理解していなかった。
Tom「嘘でもそんなこと言うな」
Kurt「えーどうして?」
Tom「どうしてもだ」
Kurt「えー」
 だってそんなの寂しすぎるから。
Kurt「もしかして寂しかった?」
Kurt「どこ行くの?」
Tom「買い物。何もないからな」
Kurt「はーい。行ってらっしゃい」
「寂しかった」
 言えば伝わるだろうか。
 お前がどんなに寂しいことを言ったか
 俺がどんなに寂しく感じたか
 言えば伝わるだろうか。

プロフィール

HN:
真崎 束音
性別:
非公開

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