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2024年11月24日
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シグナル
短編
2014年06月18日
※近親相姦なのでご注意を
学校から帰ってきて一息した時に姉は帰ってきた。リビングには入ってこずそのまま二階に上がった。自分の部屋に直行する。僕は料理している母親を見た。テレビの音と調理の音が混ざり合って姉が帰ったことには気づいてないようだ。
「姉ちゃん帰ってきたね」
僕は一応母に声をかけた。生返事だが認知はしてもらえたようなので、僕はまたテレビに視線を戻した。
この時間は僕が読む雑誌のアニメがやっている。僕は部屋にいても何もすることがないので観ていた。しかも今は父がいないので大きなソファーと大きなテレビを占領していた。父がいれば強制的にニュースに変えられる。反論の言葉も言うことができない。母は料理に集中しているし、姉は上に上がったまま降りてこない。
「櫂(かい)、逸美(いつみ)呼んできてくれない。帰ってきたんでしょ」
俺は丁度最後のシーンに差しかかったので、拒否の態度を示した。
「ほら早く。せっかく出来立てなのに冷めちゃうでしょ」
母がエプロンで手を拭きながら料理を片手にキッチンから顔を出した。テーブルに料理を置いて、拒否権はないという姿勢を出している。
「父さんは?」
「今日は遅くなるって」
「へえ、そうなんだ」
呼びに行かない理由を提示できないと僕は悟った。
僕は名残惜しみながらテレビから視線を外しソファーから腰を降ろした。あえてテレビのチャンネルを変え結末を観ることができなかった悔しさを打ち消した。
階段を上がるのが憂鬱だ。別に姉のことが嫌いではないが、今はあまり姉に関わりたくなかった。べたべたするほど仲のいい姉弟ではないが、それなりに距離は保っている間柄だった。
元々僕と姉の部屋は一つだった。寝室と勉強部屋を分けて、僕と姉は多くの時間を二人で過ごした。その頃は漫画でも本でもゲームでも何でも共有し合った。僕は小学五年、姉が中学二年の時に部屋を分けてから僕と姉は枝分かれするよう趣味も興味も離れていくようになった。
部屋のドアが少し空いている。隙間から姉のベッドが見えた。
声も物が動く音さえしない。もしかして寝ているのか。僕はそう思い念のため声をかけた。
姉弟とはいえ高校生の女の子の部屋に断りもなく入るのは躊躇われた。
「姉ちゃん」
僕はもう一度声をかける。やはり反応がない。意外と叩く音なら目が覚めるかもしれないと僕はドアをノックした。それでも反応がない。
僕は天井に溜息を吐いて意を決した。
開けると姉は制服のまま眠りについていた。高校に入って一段と短くなったスカートから白い肌が覗いていた。脱いだブレザーの上着がベッドの上で丸めて置いてある。リボンを外す前にこと切れたと窺える。
僕が部屋に入ったことに姉はまったく気づいていない。
友達との会話を思い出した。
部室での同級生との会話だった。後輩は先に帰って、他の同級生も先に部室を出た。残ったメンバーはクラスは違っていたが仲が良かった。部活から離れてもメンバーは昼休みなどによく遊ぶ仲だった。
互いのことはかなり話している。それでもよく自分のことを話すのが崎野だった。
「俺ねーこの前木田とキスしたぜ」
突然の告白はみんなを沸き立たせた。疲れたことなど頭からきれいに吹き飛んでいる。
「まじかよ! 先越された」
「何で木田もお前なんかと。俺のほうがぜってえいい男なのによ」
僕はみんなが崎野に詰め寄っている中、僕は静かに会話を聞いていた。ふと思い立ったように質問した。
「どうだっだ?」
押し込めていた感情が膨れ上がるのを感じた。
目の前には無防備な姉がいる。僕はある一ヶ所を見つめた。吸い込まれるように俺は体を倒した。
ゆっくりとゆっくりと目標を定めて近づいていく。姉の顔が眼前に近づいたところで目を閉じた。
僕は姉にキスをした。
離れてからもその唇の感触が忘れられない。柔らかな感触の余韻が体全体に伝わって、僕は震えた。足を崩しそうになった。もう一度姉の唇に触れたいとさえ思った。食らいつきたい衝動に襲われる。
姉を見たら起きる様子はなかった。僕は再び姉に唇を寄せた。
「櫂」
それほど近づいていなかったのが幸いだ。姉は不信がることはなかった。
「ごめんね。私起きなかった?」
「え、ああ」
僕はあまりに自然なだったので、逆に戸惑った。
「起こしに来てくれたんでしょ。ご飯?」
「うん」
「着替えて降りるから、先に行ってて」
「分かった」
簡素な会話は終了された。僕はこのままいたら何かをしてしまいそうだったので大人しく部屋を出た。
ドアを閉めたら、気持ちにもドアを閉めた気分になる。
それから僕は無防備な姉を見る度にキスを繰り返した。濃厚なキスにはいつまで経ってもできなかったが、僕は姉が目を閉じている時間だけはこの気持ちが許されているような気分になった。
まるで合図のように姉が目を閉じる。僕はキスをする。
「同窓会?」
家族四人が揃った夕食の最中に両親が言った。繰り返したのは姉だった。
僕は黙って聞いていた。
両親は中学時代の同級生で、二十歳の同窓会で連絡を交換したことが始まりだったらしい。中学の時はろくに話すこともなかったのだが、同窓会で成長し合った姿に互いが惹かれあったそうだ。
久しぶりに開かれる同窓会に夫婦で出席することは何とも喜ばしいことだが、僕達姉弟にとってはちょっとした問題だ。何しろ同窓会が行われるのは二人の故郷。その故郷は関西地方にある。金曜日の夕方に出かけて、日曜日の夜に帰ってくるらしい。二泊三日の夫婦水入らずというわけだ。
すべての食事を現金で渡すわけがないので、夕飯は必ず家で取ることになる。つまりは食事を作らないといけないというわけだ。しかも夜には二人の声を聞くために電話をすると言うので、内緒で誰かの家に泊まりに行くこともできない。
姉はとくに気にしていないようだから、僕が気にしても仕方がない。
気にすることもなくその日が訪れた。姉は朝食を取らないので、ぎりぎりまで起きてこない。僕は母親から伝言を受け取り、学校へ向かった。
「うーす」
「崎野」
僕は同じクラスだった。他の仲のいいメンバーは他のクラスだ。
「元気い?」
朝からテンションが高い。いつもより高いので僕は何となく気になった。
「お前は元気みたいだな。何かあったの?」
「んー気になる?」
聞いてほしそうな、話したそうな声で言うから、僕は崎野の欲求に従った。
「気になる」
「お前に一番先に話すんだぜ」
崎野は顔を寄せてきた。僕も顔を寄せた。
「実はな……」
声を潜めて、妙な間合いを作った。
「木田とディープしたんだ」
俺は声を上げそうになった。自分がまだ至っていない境地に友人は辿り着いたのだ。僕は気になってしょうがない。
「どうだった?」
俺は数か月前と同じ質問をした。
「やっべえよ。まじ気持ちいい。あー思い出したらしたくなってきた」
「ふーん」
僕は素っ気ない言葉を返した。
「ふーんてお前興味あんのないの、どっちなん? 聞いてくる割には適当な返事しかしねえし」
崎野は高揚から一気に真顔になる。
「そりゃあ俺だって男だよ。興味ある」
「教えてほしいか?」
僕は崎野の冗談を無言で沈めた。
興味があるのは本当だ。本当のキスの味を崎野は知っている。僕がするような偽物のキスとは違う。お互いが気持ちを認め合ったキスだ。僕の決して辿り着けない、辿り着いてはいけない場所だ。
僕は部活が終わって部室でだべることなく学校をあとにした。歩いていると姉からメールが入った。夕飯のリクエストだ。明日は自分が作るから今日は僕に作れという事後承諾をさせられた。これで作ってなかったらたとえ理不尽でも怒られるのだろう。僕はメールの内容を熟読し、スーパーへ向かった。 家に帰ったらもう両親がでかけて随分経ったあとたった。部屋が冷たい。
僕は姉にメールして何時頃に帰ってくるか尋ねた。丁度帰宅してくる頃を見計らって料理を作るつもりだ。
こういうことには慣れていた。両親は僕が生まれて今まで仲がいい。多分これからも。喧嘩をすることがあってもとても些細なことで次の日には仲直りしている。二人きりになればすぐにいちゃいちゃするので迂闊に近寄れない。そういうわけで両親が揃って出かけるのは珍しくない。その上お金を置いてこれで夕食を食べてねということはしなかったので、僕も姉も自然に料理をすることが身についた。
僕はパスタ料理を作るのが好きだ。姉も僕が作るのは母親より美味しいとと言ってくれる。従来からあるものや創作でも作ったりする。小さい頃色んな具を入れて試したかいがあってバリエーションは豊富だ。
姉は僕にカルボナーラを頼んだ。それも手作りの。生クリームを買ってマッシュールも買って、すべて一から作らなければならない。面倒だ。姉が帰るにはまだ時間があるが、僕は具だけでも切っておくことにした。
部屋着に着替えて、僕はほんの少しソファーでくつろいだ。特に観たいテレビはないが電源を入れた。
母のエプロンを借りて調理を始めたのは三十分後だった。何回か作ったことがあるが久しぶりなので本を見ながら作った。作ってるうちに手順は思い出してきたので、次第に本から目を離すことが多くなった。
夢中になると時間も音も気にならなくなる。僕が雨の音に気づいたのは盛りつけをし始めてからだった。音は小ぶりの大きさではなかった。結構な度合いで降っている。姉は大丈夫だろうか。まあ今はコンビニでは五百円以内で売っているから濡れるぐらいなら姉は買ってくるだろうと勝手に思った。
盛りつけが完了し、僕はテーブルに料理を運んだ。丁度よく姉が帰ってきた。玄関に迎えに行くことはしない。リビングのドアが開くのを待ったが、玄関から姉の声が聞こえた。
「櫂、タオル持ってきてくれない」
僕は玄関まで行って姉を見た。髪が肌にはりついている。とりあえず脱いだであろう上着が置いて持っていて、濡れたカッターシャツの向こうに肌の色とピンク色が見えた。
「今持ってくる」
僕は風呂場に行ってタンスからバスタオルを二枚取り出した。足早で玄関に戻って一枚を姉に渡し、もう一枚は床に敷いた。姉は上着を僕に渡し、タオルの上で靴下を脱いでそれも僕に渡した。僕はその二つをすぐに風呂場に持っていき、上着は乾燥機に靴下は洗濯機に入れた。スイッチを押すと乾燥機が回る音が響いた。
僕は玄関に行かずリビングで足を止めた。
しばらくして姉が髪を拭きながらリビングにやってきた。
「あー美味しそう。さすが櫂。着替えてくるね」
「ちょっと待ってよ。風呂入んない気? 風邪引くよ」
「せっかくあんたが作ってくれたのに、冷めちゃったら勿体ない」
「そんな大したもんじゃないから、風呂入ってこいよ。明日風邪引かれたら俺が看病しなきゃなんないだろ。ほら」
背中を押すと姉は観念したのか、二階から着替えを持ってきて風呂場に向かった。
シャワーの音が聞こえる。僕は振り払うようにテレビの音量を上げた。
「先に食べてれば良かったのに」
風呂から上がってきた姉は言った。体を温めるどころか髪もついでに洗ったようだ。姉専用のシャンプーの香りがする。
「いや、テレビ観てたから」
僕は言って、冷蔵庫のほうへ向かった。扉を開けてお酒を取り出す。
「あんたそれ……」
「スーパーの店員は結構緩いんだ。簡単に買えた」
「私にもちょーだい。じゃないと父さんにばらすからね」
姉は自分のグラスをテーブルに持ってきて言った。僕は自分のグラスを取り出して、姉の前に座った。
プルタブを引き起こして、姉のグラスに注いだ。白い液体が姉のグラスに溜まっていく。イチゴ柄の向こうにか白い液体が揺れている。
続いて僕は自分のグラスに注いだ。僕のはシンプルに透明一色だ。
「うまーい。明日のリクエストは?」
姉は唐突に尋ねた。
「まだ夕飯中なのに、明日のご飯って。気が早すぎだろ」
僕は半ば呆れて言った。
「今日はあんたが作ってくれたでしょ。早いほうが色々やりやすいじゃない。何でも作るよ。あんな両親だから料理には慣れちゃったしね」
「そうだね。ほんと勘弁してほしいよ」
俺は会話の途中で食事を終えた。姉はまだ半分残っている。
「食べるの早いし」
「姉ちゃんが遅すぎんだよ」
「風呂入ってきたら、ついでにお湯入れたし」
だから長かったのかと僕は悟った。風呂はあとで入れるつもりだったのに姉は気を利かせてやってくれた。単に浸かりたかっただけなのかもしれないけど、仕事が減ったことには変わりないので心の中で感謝を述べる。
思ったよりも長く入りすぎてしまった。風呂は好きだ。記憶に存在する中で寝てしまいそうになった経験が何度かある。もっと小さい頃は実際に寝てしまったこともあったらしい。あの時はびっくりしたと母が愚痴をこぼしたこともある。
髪はいつも自然乾燥だ。前髪は多少伸びてきたが、全体的にそれほど長くない。姉なんか髪を乾かすのに数十分かかるほどだ。
リビングに行くと姉はテレビを消してソファーで寝ていた。僕は息を飲んで合図に従った。
淵に手をかけ、姉にキスをした。もう一度キスをする。欲望がどんどん溢れてくるのを感じながら、三度目のキスをした。
さすがにやりすぎたと反省する。見ていたらもう一度キスをしてしまいそうなので、僕は反対方向を向いた。
「覚悟はしてるの?」
僕は突然降りかかった姉の声に素早く反応した。たった今起きたような声じゃない。発音もはっきりしている。目に睡眠の余韻は感じられない。
姉は起きていた。僕は驚愕して声が出なかった。
「何してるか分かってるの?」
僕は一つの結論に至った。
「俺が姉ちゃんに何してるか分かってたのかよ」
姉は黙っている。
「覚悟って何? 父さんや母さんを悲しませることか。姉弟の一線を越えることか。もうとっくに越えてるよ!」
「まだ戻れる」
「じゃあ何で目を閉じたんだ! ドアを開けてたんだ! 覚悟なんて知るかよ! 俺は、俺は……」
うまく言葉が紡げない。
「しょうがないじゃない。あんたがキスなんてしてこなきゃ、私だってこんな気持ちに気づかなかった!」
覚悟なんて知らない。
姉弟なんて知らない。
あるのはこの気持ち一つだけだ。
「姉ちゃん、目を閉じて」
僕は言った。それがどういう意味かきっと伝わると信じていた。
僕と姉の視線はほぼ同じだ。成長期だとはいえ、まだ胸を張って追い越せていない。それでも少し僕のほうが高い。
姉が目を閉じた。僕はゆっくりとソファーに体を倒しながらキスをした。最初は浅く、徐々に深く入り込んでいく。
独りよがりのキスが初めて二人のキスになった。
僕は姉の衣服に手をかけた。僕はぎこちない手つきで脱がしていく。姉の動きがそれを手伝った。僕も姉の手によって服を脱がされた。
多分姉は経験があるのだろう。僕の愛撫する手を導いてくれているように感じた。僕は導かれるままに姉の体に愛撫を施した。姉も僕の性器を愛撫してくれる。挿入する前に一度達してしまった。
二人の息遣いが紅潮し始めた頃、僕と姉は一つになった。初めての挿入に僕は少しだけ戸惑った。でも姉の顔を見ると苦しそうに笑っていた。
もう止まることなんてできないと思った。
僕が腰を動かす度に姉の体が揺れた。少し苦しそうな呻き声から、快感からもたらされる甘い声に変わる。僕はそれが嬉しくて嬉しくて、動きを速めた。僕のほうも快感に酔った。姉の嬌声と共に聞こえてくるのは、自分の艶めかしい喘ぎ声だった。徐々に荒くなっていく息に混じっている。僕はさらに行為に没頭した。
時々姉の顔を見てキスをして、深くキスをして、胸に顔を埋めたり、乳房や上半身に舌を這わせた。姉の頬が上気していく。僕にも最高潮の時が訪れようとしていた。
「愛してる」
僕は自然と口にしていた。
その瞬間心も体も最高潮に達した。次に脱力感に襲われた僕は姉の体に倒れこんだ。姉から腕を回してきたので、僕は気づいたら涙をこぼしていた。
「私も愛してる」
僕は一瞬信じられないような気持ちになった。幻聴かと思ったほどだ。でも、姉の顔を見ると優しく笑っていた。
僕は言葉を繰り返した。姉が目を閉じた。
許されたこの気持ちがどこへ続いて行くのか分からない。この気持ちの先にあるものは決して幸福ではないことは知っている。姉も知っている。
それでも僕達は互いの気持ちを許し合った。
姉の部屋を見るとドアが開いている。僕はゆっくりと部屋に足を踏み入れ、音を立てないようにドアを閉めた。
姉はベッドにいた。仰向けになっている。寝息は聞こえない。
僕は横に腰をかけ、長い髪を掬った。柔らかい髪は僕の手から簡単に落ちていった。僕は小さく笑みをこぼした。
「勝手に触らないでよ」
僕は姉が起きているのを知っていたからさほど驚かない。
「いいじゃん。女の人の髪ってなかなか触れないし。柔らかそうっと思って」
「まーいいけどね。ところで何の用?」
姉は意地悪っぽく尋ねた。クッションを抱いて体を起こしている。僕の返答をそわそわと待っている。
「分かってるくせに」
僕は姉のクッションを奪い、体をベッドに倒した。姉を上から見下ろし、滑らかに髪を撫でた。
数秒見つめ合った。
姉が目を閉じる。僕はキスをする。
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